チームとして営業力を高めるためには、営業プロセスを意識して実践することが重要です。IT化などを背景に、近年では顧客側も情報収集がしやすくなり、こちらが従来型の「足で稼ぐ」営業が難しくなっているためです。顧客に商品を売るのが決して簡単ではない時代に成果を上げるには、科学的な営業アプローチを実践しなくてはなりません。

しかし、「営業プロセスがどのようなものかイメージできない」という方も少なくないでしょう。なんとなく理解はしているものの「チームにどのように営業プロセスを落とし込めばよいのかわからない」などの声も耳にします。

この記事では営業プロセスがどんなものかを踏まえて、営業プロセス導入のメリットやコツについて解説します。営業力の強化に取り組んでいる企業は、ぜひ参考にしてください。

 営業プロセスと、営業フローは異なるもの

最初に営業プロセスがどのようなものかポイントを押さえましょう。

営業プロセスと混同されがちな言葉に「営業フロー」がありますが、両者の違いをあわせて解説します。まず営業プロセスの理解をはっきりさせて、導入や活用方法を考えてください。

営業プロセスとは

営業プロセスとは、見込み顧客の創出から顧客定着までの一連のプロセス、過程を意味する言葉です。

かつての営業活動は、効率や確率よりも、とにかく多くの見込み顧客にアプローチすることが重視されがちでした。一人ひとりの営業パーソンが外に出て、1社でも多く訪問することが良しとされていたのです。効率はともかくとして成約率が一定の割合ならば、着実に成果を伸ばせる古典的方法です。

一方で、営業活動を過程ごとに可視化することにより、従来では難しかった営業活動の詳細な管理や分析が行えるようになります。

営業プロセスの流れ

営業プロセスの全体的な流れの例を紹介します。見込み顧客が生まれるフェーズから、商談、受注、定着など7段階に分けられます。

プロセス設計の際にとくに重要なポイントは、営業の起点とクロージング後の部分です。

「営業プロセスは、顧客とのファーストコンタクトからクロージングまで」と誤解されている方もいますが、営業の成果を高めるためには集客も、ファン化も切り離してはなりません。

  1. リーチ・集客

見込み顧客を創出する工程です。展示会のブースやセミナーを通じて、見込み顧客を集めて顧客データ、リードを獲得します。

  1. アプローチ

テレアポやメール送付などにより、獲得したリードに対して営業アプローチをかけます。

  1. リードナーチャリング(見込み顧客の育成)

顧客の育成段階です。相手の興味の高さや、製品購入までの検討度合いに分けて段階的なアプローチを行います。見込み顧客が自社への興味、購買意欲が高まるようにコミュニケーションを取るのです。

  1. アポイント取得

顧客との商談アポイントを取る工程です。商談の日時を設定します。「Zoomなどオンラインで気軽に話をしましょう」などと直接対面よりに比べ商談設定のハードルを低くするのはコツです。

  1. 商談

直接対面もしくはオンライン商談にて、顧客の悩みや疑問に対して掘り下げてアプローチします。課題の解決方法として自社サービスを紹介し、興味を惹きつけます。

  1. クロージング・受注

こちらからクロージングし、先方の購買意志を固めます。速やかに見積書の発行、契約書の締結などにより受注を正式に確定させましょう。

これで取引がスタートします。

  1. アフターフォロー・ファン化

導入後、顧客に本当に満足してもらうためにはアフターフォローやカスタマーサクセスが重要です。SaaSなどは価値を実感してもらわうことで継続受注や受注額の増加などを目指せるようになるからです。

その後も、継続的に営業アプローチを行います。売ったら終わりではありません。

営業フローとの違い

営業フローとは、個々の営業活動の流れを細分化したものです。

営業プロセスの役割が、「チームとしての営業活動の過程を可視化すること」であるのに対して、営業フローは個別の商談やテレアポといったアクションの流れを可視化するものです。

商談を例にしましょう。

  • 営業プロセス… どのような時期・状態で商談に移行するのか?を考える
  • 営業フロー … 商談を行う際にまずどんなトークで導入する?その次は?などを考える

したがってトークスクリプトや営業マニュアルも、営業フローの一部です。営業プロセスと営業フローは、目的や役割が異なるので、効果的に併用するのが理想です。

 営業プロセス管理を実施する3つのメリット 

 営業プロセスを分析・管理できるようになると、まずチームの営業力向上に役立ちます。

ここでは、営業プロセス管理のメリットを3つの観点から解説します。

  • 営業力強化
  • 進捗状況の把握
  • モチベーションの管理

チームとしての営業力の強化

営業活動の途中過程が見えない状態では、たとえばクロージングに至らなかった案件の「いつどこに問題があったのか」把握できません。

従来、営業は属人化しやすい。成果を出せる営業パーソンの育成は難しかったのも、営業活動が可視化できなかったことが原因の一つと言われています。

営業プロセス管理をすることで、具体的に以下のように改善が期待できます。

  • 一連の営業活動において、失注ポイントが明確になる
  • 担当者ごとに強みや弱点が明確になる(テレアポの取得率は高いが、商談の成約率が低いなど)
  • 担当者ごとに強みを生かした配置転換、弱点をカバーする研修の実施など対策を取れる

こうして「エース営業パーソンへの依存」から脱却し、チーム全体の営業力を底上げできます。

進捗状況の把握

 マネージャーが売上目標の進捗状況を管理する際に、途中経過を一目で確認できるようになり、見込みを立てやすくなります。

継続的にデータを集めれば、商談の成約率などの重要なデータが蓄積され予測精度も高まります。

さらに高い精度の売上予測に基づいて、売上目標に必要なリードの獲得件数を算出したり、月間目標を途中で修正したりするなど、営業戦略立案もスムーズになるでしょう。

モチベーション管理

営業プロセス管理は、営業パーソン一人ひとりのモチベーション管理にも役立ちます。

  • スモールステップで目標管理ができる
  • 売上見込みの精度アップから、実現可能で最適な目標設定をしやすい
  • 営業パーソンが自分自身の強みを把握し、自信を持てる

営業部全体のマネジメント責任を負う立場の部長、セールスマネージャーにとっても部署のマネジメントをしやすくなります。

営業プロセス管理の実行手順

営業プロセス管理を実行する際に、具体的にどのような手順で行うべきかを解説します。手順まできちんと理解して取り組むことにより、営業プロセス管理が効果的に機能します。

営業プロセスの標準化と見える化

最初に行うべきは、営業プロセスの標準化・見える化です。標準化とは、チーム全員で統一された基準の営業プロセスを行うと約束することです。全員が同じやり方を行うことで、長所や課題が見えやすくなるのです。

実際、営業プロセス管理を導入していない場合、営業活動の手順や進め方は個々の営業パーソンに任されることとなり、人によって大きく異なります。

ただし商材や営業手法によって、適した営業プロセスは異なるため、営業プロセスを自社で作成し、チームのメンバー全員に落とし込みましょう。

KPIを設定する

次に、営業プロセスの一つひとつに対してKPIを作成します。KPI、重要業績評価指標は、最終ゴールである目標を達成するための中間指標です。したがってKPIは、最終目標から逆算して設定します。

例:目標から逆算するKPIの作り方

当月の受注目標100件の場足
→必要な見積書送付件数200件
→見積書送付件数200件に必要な商談数500件
→商談数500件に必要なDM送付件数2,000件

上記のように、プロセスを遡りながら各プロセスの数値を設定し、その後個々の営業パーソンの目標に落とし込みます。当然ながら、KPI設定前の段階で営業プロセスを作成しておく必要があります。

また、既存顧客に対する目標管理も忘れずに行いましょう。営業プロセスの重要な要素である「既存顧客のファン化・リピート化」も含めて考えるためです。

既存顧客のファン化は、新規獲得を開拓する場合と比べ数値化が難しい場合もあるため、KPIの設定方法には工夫が必要です。よく用いられる指標としては、以下のものがあります。

  • リピート率や購買頻度などをもとに、アプローチする時期を設定する
  • 担当者ごとに、アプローチ頻度を設定する

いずれの場合でも、クロージングに向けての営業プロセスとは異なり、既存顧客に対してのアプローチは営業担当者の行動管理でプロセス化するケースが一般的です。

 効果を検証する

営業プロセスがうまく機能しているか、定期的に効果を検証する必要があります。

プロセスごとのKPIの達成状況をチェックして、未達成の場合には理由を掘り下げます。このとき、考えるべきポイントの具体例は以下のとおりです。

  • KPIを達成できなかった最大の要因は何か?原因は内部、外部どちらにあるのか
  • KPIや最終目標はそもそも適切だったか?
  • 目標達成には、次はどのようなKPIを設定すべきか?
  • 営業プロセス自体に欠陥がある?見なおすべきか?

チーム全員での営業プロセス検証のあとは、個々の担当者に関しても同様の検証を行います。

このとき、営業プロセス管理が機能していれば、ネックポイントが明確になるため、適切なフォローや指導しやすくなるでしょう。 

プロセルトラクションが営業プロセス管理の実践をサポート

この記事で営業プロセス管理の概要は説明していますが、新規事業で自社製品に合わせた手法を見つけて実施することはかんたんではありません。そこでプロセルトラクションではあなたの会社にマッチしたリードジェネレーションの手段のご提案から実践までサポートしています。

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 営業プロセス管理を成功させるための3つのコツ

導入時から営業プロセスの確度を高め、効果的に管理・運用するには、成功のコツを営業メンバー全員に落とし込むことです。実現すれば営業プロセスの導入効果は組織全体に広がることでしょう。

営業プロセス管理の成功ポイントを3つ解説します。

 成果の出ている営業手法をベースにする

営業プロセスの標準化で効果的なのは、成果の出ているエースの営業手法をベースにすることです。

従来の営業のやり方を変えることに対しては、メンバーから不満や戸惑いが出るかもしれません。ただし成果の出ている方法論をベースにして全体の結果を伸ばすことを明言すれば、反対もおさえられるはずです。

ただし、成果が出ていても、再現性の低い方法で成果を上げている場合には注意です。その場合は参考程度にとどめて、メンバーで協議して再現性がある営業プロセスを作っていくことが重要です。

 メンバー全員が数値を意識する

せっかくKPIを設定しても、営業パーソン一人ひとりの目標管理意識が低ければ、プロセス管理はうまく機能しません。結果的に管理者もマネジメントの工数ばかりがかかってしまいます。

営業プロセスの効果を引き出すには、全員が目標数値、KPI、現状の数字を意識しているべきです。ルーティンの営業会議で常にKPIと関連させて数字を報告するなど日々の意識強化が重要です。

 ツールを活用する

営業プロセス管理をさらに適切に行うためには専門ツールを活用しましょう。

近年ではクラウド技術を活用したイニシャルコストの安いツールも数多くリリースされています。営業プロセス管理だけでなく、スタッフのスケジュール管理や情報共有などにも活用できるため、営業プロセス見直しの機会にぜひツールの導入を検討するとよいでしょう。

営業プロセス管理を実行するためのツール 

営業プロセス管理をサポートする、評価の高いツールを紹介します。

無料で利用できるツールもあるので、まずは機能を試してみてはどうでしょうか。導入もさほど難しくありません。

Google Apps Script

Google Apps Scriptは、無料で利用できるGoogle提供のプラットフォームです。Google各種サービスと連携でき、メンバー間の情報共有も簡単におこなえるので、まずは簡易的な管理のテストに使えます。営業専門のツールではありませんが、使い慣れている営業メンバーも多く、導入に抵抗が少ないはずです。

<Google Apps Scriptで連携できるサービス>

  • Googleカレンダー
  • Googleスプレッドシート
  • Googleドキュメント

例えば、スプレッドシートでチーム全体のスケジュールや営業工程表を作成する、さらに一人ひとりの担当者の営業カレンダーを連携させるなどの方法があります。

比較的、ユーザー数が少ない場合は無料機能が豊富でこれで十分です。管理する顧客情報が増えてきたら、専門ツールに乗り換えを検討するのもおすすめです。

SFAツール

営業のプロセス管理に特化したツールとして理想的なのは、SFAでしょう。

SFA(Sales Force Automation)とは、営業効率化を目的とした営業特化ツールです。セールスフォース、HubSpotなど世界的に有名なサービスをはじめさまざまなSFAがリリースされています。

SFAツールに共通して搭載されている機能は次のようなものがあります。

  • 顧客管理
  • 案件管理・商談管理
  • 担当者のスケジュール管理・タスク管理
  • グループウェア
  • 売上予測

SFAツールは、営業プロセス管理のことも考えられていて、便利なツールです。こちらも機能を限定して使えば、無料で使えるSFAもあるので、無料版で操作性や機能を確認できるようにテスト導入するとよいでしょう。

顧客のデータベースなどを取り込むなど、社内の準備も必要です。

〇代表的なSFAツールを紹介

営業プロセス管理で見える化を推進しよう

特定の個人に依存せず、チームとして営業力を高めるために重要な点は、営業プロセスの管理を導入することです。

営業プロセスとは、見込み顧客の創出から顧客のファン化までの過程のことです。これらの過程を一つひとつ明確にし、適切に管理をすることにより、営業案件を適切に管理し、組織全体の営業力の底上げにつなげられます。

営業プロセスによって営業活動を標準化できたら、KPIの設定や効果測定により精度を高めることで営業プロセスの成果を最大化できます。

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プロセルトラクションではリクルートなどの大企業からスタートアップまで幅広く経験してきた営業のプロがあなたの会社にあった方法で営業代行いたします。営業でお悩みの方はお気軽にご連絡ください。

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