立ち上がった新規事業を軌道に乗せられるかどうかは、どのくらい早く売上がたつかに左右されます。しかし新規顧客の獲得までには相応の準備が必要です。これは、0→1(ゼロイチ)の新規事業であればなおさらで、売上があがらないままでは、企業としては赤字が増え続けることになり、「このまま事業を続けていいのか」という話になりかねません。

新規事業の営業は難易度が高い分、見返りの大きい仕事でもあります。その進め方や重要なポイントについて解説します。

新規事業の営業の壁

新規事業の立ち上げ時には、既存の営業とは異なる壁が立ちはだかります。

市場ニーズにマッチした商品で、1本のリリースを配信しただけで見込み客からの問合せが止まらなくなるなら最高です。…しかし現実にはそんな話はほとんど聞かれません。

「企業としての母体と信頼度が大きい」「既存の製品の知名度が圧倒的」などでなければ、新規事業では知名度も低く既存客の口コミさえないので、当然のことながら初期の営業には苦労します。

人員と予算

新規事業では人員や予算が不足しがちです。うまくいくかどうかわからない段階で、膨大なパワーと予算は投入できないのは事業スタート時の永遠の命題でもあります。

結果を出すには、各部署からエース営業マンを集めたいところですが、普通ならそんな人材を手放してくれません。

また新規事業の初期は、営業ノウハウが確立されていません。既存商品をよく売れる営業パーソンが必ずしも新規事業に適性があるとは限らないので、見極めも難しいところです。

また限られた広告予算の使い方にも頭を悩ませることでしょう。

市場のニーズ把握

新規事業を立ち上げる時点ですでに市場調査はされているはず。そこで有望と判断されたからGOサインが出たのに、「やってみたら見込みと違った」ケースはよくあります。こちらの動きを察して、競合会社が値下げをしてこられたら目論見は狂うでしょう。

そのときは市場調査の際、ヒアリングに協力してくれた企業や、自社の既存客などを頼るとよいでしょう。ニーズを深掘りし、営業戦略も修正する必要があるかもしれません。

プロダクト(製品)を見るのではなく、マーケットを見るのは新規事業の営業時に重要なポイントです。

ターゲットが曖昧である

「誰が買って くれるのか、この商品を欲しているのか」が狭く、ニッチな状態でセールスをスタートすると、売り先が限られるので営業面の先行きは不安です。

しかし、曖昧でぼんやりした状態だと、誰にも刺さらないということが起こります。広告はマスで訴えかけますが、個別の営業開拓としては「このカテゴリーは~~という理由で見込みが高いので最優先に営業をかける」という仮説と実行が求められます。

勝ちパターンが確立されていない

商談後に「これは受注が取れる」判断の精度がブレるのも新規営業ならではです。

  • 具体的に製品導入を検討し稟議待ちの見込み客が10件
  • 固く見積もっても、5件は月内に契約できそう。

営業パーソンは受注の歩留まりを計算しますが、見込みが当たらないのが新規事業です。大きく下振れることもよくあります。相手が慎重になる、こちらの見込みがつい甘くなるなどが原因です。

見込み客のよくある「NO」に対しての切り返しトークや、セールスツールも発展途上のことが多く、「このパターンに持ち込めば受注が取れる」という勝ちパターンを早期に確立したいところです。

確認しておきたい営業計画の作り方

計画を微細に作るのも手ですが、まず外に出て売ってみることが重要です。売れないとしたら、売れない理由に改善のヒントが隠されているからです。

新規事業の営業計画では、昨年比の数字を入れられません。無謀な数字だけを追求しても意味がありませんし、堅実すぎる見込みを提出したら「本気で事業を伸ばす気があるのか」などと疑われてしまうかもしれません。

だからこそ生の実態を把握しながら、リアルに近い営業計画を作っていく必要があります。

正確なペルソナを作成する

ペルソナは新規事業の製品を利用してほしい人物の詳細なイメージです。B to Bの場合には企業像でもいいかもしれません。

この理想的な顧客像を詳細に定義するにはどうすればよいでしょう。

×ただのターゲット
製造業。社員数300~500名、本社は山梨県で、都内に営業所がある。営業人員の勤務管理に課題あり。

○ペルソナ(詳細な顧客像)
山梨県にある燃料電池に使用する部品メーカー。創業家の3代目が10年前から社長になった。性格はトップダウン型で、社長があらゆる社内の仕組みもデザイン。営業部長は都内在住で、週一回本社と往復する。業績拡大とともに営業人員を14名と倍増させた。部長一人のマネジメントは難しくなってきている。

後者のような明確、具体的な企業、人物をイメージすれば、何を伝えるかが定まっていきます。ただし、営業活動やヒアリングを行ってみて、当初定めたペルソナと、実態に乖離があると判断したらペルソナの再修正を行います。

営業リストの作成と再調整

売るべき相手が明確になったら、同じような企業を集めたアタックリストを再度作成します。

50~100社程度、一斉にアタックでき、同じストーリーを提案できる企業群であることが望ましいです。

さらに自社のデータベースと照合すると、同一企業ですでにコンタクトがあった場合に、それが突破口になることがあります。

アプローチ先が別の事業でかかわっていただけだとしても、「この度、製造業向けの営業マネジメントシステムを開発しました。情報だけお届けしたいのですが、どなたにお伝えするのがよいでしょうか」など、担当者名を聞き出すのは比較的容易なはず。

接点が何もない場合は、Webサイトに掲載されている社長名しか分からないということになりますので、営業効率はかなり落ちます。

収益のシミュレーション

販売価格や粗利益とともに、営業コストも考えておきたいところです。

とくに広告宣伝や営業キャンペーンなどの予算化は必須。「新規事業に膨大な予算はかけられない」との意見がある一方で「新規事業だからこそまとまった予算を投下してブーストをかけるべき」の意見がせめぎあうことでしょう。

また一部の営業業務を外部委託する際の費用、営業人員を一時的に増やす費用なども計算しておくことをおすすめします。

専門家の力を借りる

自社だけで難易度の高い営業活動を実行しようとせず、外部の専門家のパワーをうまく使いましょう。

より短期間で効率的に営業でき、成果が出せる上に今後活用できる知見が入手できます。

営業代行会社を活用する

新規事業の営業では、営業マニュアルの作成、業務管理の仕組み化など新たに整備しなければならないことが山積み状態です。また、できるだけ早く営業リストの企業に対して一気呵成に営業したいもの。そんなときに強い味方となるのが営業代行会社です。

テレアポ専門の代行会社は、独自にセールスリストを作り、トークスクリプトの作成も行います。まったく新しいサービスの売り込みなどにも慣れています。一気に商談アポイントを積み上げられるでしょう。

またアポイント設定後の商談を委託するのも可能です。セールスツールなどの開発を一緒に行い、自社の開発担当者などと同行するなどという方法も。高い営業力をもった即戦力のセールスパーソンを即座に補強できるのが魅力です。

さらに、コンサルタント機能をもった代行会社もいます。売り方や、営業計画作りにおいても良き相談相手となってくれます。新規事業の営業の実績が豊富な代行会社に委託すれば、百人力でしょう。

営業派遣、フリーランスの活用

よりシンプルに営業人員を、一時的にだけ増やしたいならば、営業派遣やフリーランスの営業マンを雇うのがいいでしょう。代行会社よりも少額のコストで委託できます。ただし、教育や指示命令は自社で行う必要があります。

営業代行会社の社員に比べると、人材レベルにバラツキがあるのも確か。売れるスキームができてから、依頼するのがいいかもしれません。

プロセルトラクションが新規事業の立ち上げサポート

この記事で新規事業立ち上げの概要は理解できますが、それを自社に当てはめることはかんたんではありません。そこでプロセルトラクションではあなたの会社にマッチしたインサイドセールスのプランニングから実践までサポートしています。

まずは話を聞いてみる

PDCAを回す

実際に売ってみて、以前よりよくなっている点、あまり進歩がない点などが浮かび上がってきます。

一定の件数をまわれば、営業活動の分析が行えます。営業をかけた中で興味を持ってくれた人の割合などの分析も必要ですが、さらに「顧客の反応は実際のところ、どうだったか」「私たちが気づいていなかったこんな課題、こんなニーズを聞いた」などの生の声を集約しましょう。今後の営業指針に役立ちます。

積み重ねがあれば、相手の興味を喚起できるデータの見せ方、トークの順番なども、どんどん磨かれていき、結果が出やすくなるでしょう。

立ち上げ期に結果が出る営業とは

立ち上げ期の営業は厳しいものですが、その分結果が出たときの喜びも大きいものです。新規事業の営業に必要な個々の資質や、チームとしての雰囲気作りは独特のものがあります。

「強くて前向き」だと評価され、結果を出すために必要な要素を整理します。

リーダー自らが結果を出す

マネージャやリーダークラスが率先して結果を出していることは必須条件です。

結果を出している上司の言葉にはなによりも説得力があり、一体感が育まれます。逆のケースでは「リーダーも売れないのだから、自分が売れないのも仕方ない。商品が悪いのだ」という発想も生まれかねません。言い訳の多い組織がまったく新しい事業を売ることなどできないでしょう。

値下げさせない

厳しい競争をしているなかでは、競合サービスとの料金比較や、お試しでの値引きなど、営業パーソンが誘惑に負けそうになるのも無理はありません。

ただ安易な値下げは、自社の社員からやる気を奪います。まとまった量を一度に購入、継続購入などの理由がない以外を除いて、値下げは認めないことをおすすめします。

義務から意欲への転換

大事なことは「売りたい。自分の手で世に広めたい」と思わせることです。そうすれば意欲は高まり、行動が変わります。

仕事なので、営業は売らなければなりません。売ったから給料がもらえる。この強制されるモチベーションは長続きしません。

自信がみなぎると、アポの獲得率も目に見えて向上します。日頃の社内の会話でも「このサービスを広げる意義」「導入したお客様がこんなにすばらしい体験をする」など大義名分を会話することが重要です。

共有し合う仲間意識

成果が出たらみんなのもの、一蓮托生という意識も極めて重要です。

自分が成績をあげたいということと、自分だけ売れればいいという発想は似て非なるもの。

チーム全員で成功をつかむため、うまく相手を説得できた際のポイントを全体に共有するなど、些細なことでもチームの底上げを図る姿勢を全員がもつようにしましょう。

心から製品に自信をもつ

顧客は明るく自身がみなぎっている営業マンから購入したいものです。

しかし新規事業は、商品に対する自信が持ちづらいものです。

この契約によってどれだけのメリットが得られるかをイメージさせられるかが勝負ですので、売り手自身が最高のものを売っている、売って差し上げているというマインドであることがとてつもない効果を生みます。良いものだと思えれば、自然にもっと売りたくもなります。すこし結果が停滞しているときこそ、自分たちが売っているものの価値を再確認するミーティングなども有効です。

こうした経験を共有した営業マン同士、長年にわたって「同志」という絆で結ばれた感覚になります。

厳しいだけでなく、克服した経験は財産となるので、その後、少々のピンチが訪れても「あの新規事業の初期営業に比べればだいぶマシ」と一切動じなくなることでしょう。

新規事業の営業は成長のチャンス

誰かがすでに上手な売り方を確立したものを売るのではなく、売り方さえも自分たちで模索していくのは骨が折れるのは確か。

しかし大きな経験値を得られます。最初は逆風だとしても、それをくつがえして売れるように変えていったということにより、営業マンとしての自信も増していきます。

新規事業の営業は、社会的な影響度が高いので、ぜひ使命感をもって世のため人のために営業するのがよいのではないでしょうか。

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方法は理解したけど、自社のサービスや顧客の場合どうすればいいのか、そんな悩みをお持ちの場合は是非一度ご相談ください。リクルートなどの大企業からスタートアップまでサポート経験豊富な営業のプロがあなたの会社にあったインサイドセールスをコンサルティングいたします。

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