PoCは新しい技術や理論などを検証する概念実証を意味した言葉です。新しいアイデアがある時、それが正しくて実現可能なのかを検証する必要があります。そんな時、重要になるのがPoCです。

今回は、PoCの定義や必要になる理由、メリットや具体的な進め方、どんな内容を検証するのか、実施の際のポイントなどを総合的に解説していきます。PoCに関する知識を深めて、新しい技術を形にしていきましょう。

PoCの定義と押さえておきたい3つの基本

新しく考えた技術やアイデアを形にする時、まずはPoCを行います。PoCは失敗のリスクを低減させる効果があるため、近年注目されているのです。この項目では、そんなPoCの定義を含めた押さえておきたい3つの基本をまとめていきます。

PoCとは?

冒頭でも少し解説しましたが、PoCとは新しいアイデアや技術を形にしていくために、事前にそれが正しく機能するかどうか検証する手法を意味します。PoCは「Proof of Concept」の頭文字を取った言葉です。

目に見えるような商品だけでなく、概念や理論などのアイデアにもPoCは用いられます。新しい製品を作り出す時は、その効果を事前に確かめる必要がありますし、失敗した時のリスクも想定しておかなければなりません。

そのような時に、PoCはとても有効な手法として使えます。ここ数年、PoCという手法が浸透してきて、ビジネスシーンで重要な意味を持つようになりました。

PoCと関連する用語との違い

PoCは概念実証と訳される場合が多いですが、似たような言葉で実証実験があります。PoCと実証実験は同じような文脈で使われるケースもあるのですが、厳密には別々の意味があるのです。

PoCは新しく考えた概念や技術などが、実現可能なのかどうかを検証します。これに対し、実証実験は製品の問題を洗い出すのが目的です。

ここに2つの言葉の違いがあるのですが、PoCを行い問題や課題が明らかになる場合もあります。実際のところ、PoCと実証実験の間には、明確な線引きはありませんので覚えておくといいでしょう。

さらにプロトタイプという言葉があります。プロトタイプは考え出されたアイデアが、実現可能であって、効果があると判断された時に作る試作品です。ゴールがすでに決められていて、その最終確認を行うのがプロトタイプの作成になります。

PoCでその製品やアイデアが実現可能なのかどうか確認した後、プロトタイプの作成をするという流れになるので、こちらも覚えておきましょう。

PoCを実施する目的

近年は様々な業界でPoCが行われるようになりました。その理由は主に3つあります。

〇製品化までのスピードが求められるようになった

〇実験を通じた検証が重要視されるようになった

〇ステップが細分化されるようになった

これらの理由が挙げられます。

新しい技術を考えた時、最も重要になるのがスピードです。いかに早く製品化できるかがカギになってきます。そうでなければ、他社に先を越されてしまう可能性があるからです。

PoCでは検証のためにモノを作り上げて、それを実際に使用してもらいます。アイデアというものは、会議で話し合うだけではまとまりません。実際に製品を使用してみて得た生の声が重要になるのです。

現代のビジネスでは、事業が細分化されるようになりました。大規模な投資を一度に行ってしまうとリスクが大きくなるので、小規模な投資から始めて、効果があるのかどうか良く検証してから、最終的な成立を目指すという考えが周流になっているのです。

このような理由があるため、スピード感があり綿密な概念実証ができるPoCに注目が集まりました。

PoC実施による3つのメリット

PoCの基本が判ってくると、今度は本当にメリットがあるのかどうかは気になるところです。PoCには大きなメリットが3つあります。

〇新規事業のリスクを抑制できる

〇業務のシェイプアップにつながる

〇検証結果の応用力が高い

上記の3つです。この項目では3つのメリットをそれぞれ解説していくので、確認していきましょう。

新規事業のリスクを抑制できる

新規事業を展開する時、常にリスクというものはあります。リスクを恐れていては、新規の事業を軌道に乗せるのは難しいですが、事前にリスクを把握しておく姿勢は大切です。

PoCを実施すると、その事業が技術的に可能なのか、ニーズは本当にあるのか、採算が取れるのか、などといった情報が事前に確認できるようになります。PoCを行った結果、効果が薄いと導き出された事業は早期に撤退する判断ができるでしょう。

このように、事前に事業の不確実性な部分を解消しながら進められる点は、PoCの大きなメリットと言えます。

業務のシェイプアップにつながる

PoCを実施すると無駄なコストや工数の削減につながります。なぜなら、事前に効果の検証を行えるからです。実際に成果が出ると判断されない限り、大きなコストや工数をかけなくなるので、それが結果的に業務のシェイプアップになっていきます。

PoCは素早くアイデアが実現可能なのかどうか判るので、無駄な会議を行ったり、実験を重ねる必要がなくなります。業務時間の短縮もできるようになるのです。これもPoCを実施する魅力の1つと言えるでしょう。

検証結果の応用力が高い

PoCによって得られた検証結果は、投資する際の判断材料としても使えます。なぜなら、具体的な費用対効果が事前に把握できるためです。どの程度その投資のリターンがあるのか判るようになるのは、大きなメリットと言えます。

これが設備や人員の補充などを行う際のリスクマネジメントにつながるのです。結果的に無駄な環境を作らなくなるので、PoCによる検証結果の応用力は幅広くなっています。

PoC実施のための3つの手順

PoCのメリットが判ると、実際に実施してみたくなるかもしれません。基本的に、PoCは3つの手順を通して行われます。

〇具体的なゴールを決める

〇実験と検証をする

〇成果をもとに評価する

以上の3つです。この項目では3つの手順をそれぞれ解説していきますので、確認していきましょう。

手順1.具体的なゴールを決める

PoCを実施するために最初にゴールを決めます。新しいアイデアがあっても、着地地点であるゴールを設定しないと、何をどう検証すればいいのか判りません。

何の効果を検証し、それを進めるためにはどういったデータが必要になるのか、これらを明確にしていくといいでしょう。

手順2.実験と検証をする

PoCのゴールを設定した後、実際に仮説を検証していきます。この時、なるべく実際に環境に近い状態で行うといいでしょう。これは検証に必要な情報である「費用」「期間」「場所」「設備」などをもとに決めていきます。

後に作るプロトタイプのためにも、この段階で搭載する必要最低限の機能も決めておくといいでしょう。なぜなら、実際の環境と近い場所を作り出し、必要最低限の機能を決めておくと、検証結果のデータがより明確になるためです。

手順3.成果をもとに評価する

最後のステップとして検証結果を評価しましょう。設定した目標に対して、どのくらいの達成度があったのか、実現性はどのくらいなのか、これらを分析して結果が良ければ、本格的な導入へと進んでいきます。

仮に、実現性やリスクに対する問題があった場合は、その課題をもとにして新しいPoCを行っていきます。結果によっては、中止や撤退の判断を下すケースもあるかもしれません。PoCはリスクを最小限に抑えながら、アイデアの具現化ができる点が優れています。

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PoCで検証すべき3つの内容

ここまでPoCの具体的なメリットや手順などを解説してきましたが、PoCには検証すべき3つの内容があります。

〇本当に価値があるか検証する

〇技術的に実現可能か検証する

〇事業性が見込めるのか検証する

この3つを検証するといいでしょう。この項目では、上記で紹介した検証すべき3つの内容をそれぞれ解説していきます。

本当に価値があるか検証する

いくら良いアイデアだと思っていても、それが本当に価値のあるものなのかは判りません。それを判断するためにも、PoCの実施が必要になるのです。実際に動かして初めて判る課題もあるので、まずは本当に価値のあるアイデアなのかを検証するといいでしょう。

この時、PoCの初期段階から技術者を同行させるといいかもしれません。なぜなら、専門的な見解を得ながら概念実証を行えるようになるからです。

技術的に実現可能か検証する

技術的に実現可能なのかという点もあらかじめよく確認しておきましょう。会議の段階で良いアイデアだと思っていても、それが技術的に難しいようであれば、そのアイデアを形にするのは困難だからです。

この時、実際の現場環境に近い環境でPoCを行うと効果があります。なぜなら、期待している効果というものは、実際に環境で使ってみて初めて効果を発揮するからです。期待している効果はあるのか、実現可能なのか、この点をPoCによって判断していきます。

事業性が見込めるのか検証する

実際に効果があって、技術的に可能なアイデアであっても、事業性がないものは意味がありません。なぜなら、企業の商品やサービスというものは、売れなければ業績にはつながらないためです。

新しいサービスを展開する時、どのくらいのコストになるのか、費用対効果はどのくらいになるのか、これらを項目化して、事業性を分析していくといいでしょう。

PoCを効果的に行う3つのポイント

PoCで効果を上げるための3つのポイントを紹介します。

〇なるべくスモールスタートを意識する

〇チームを作り全員で目的を共有する

〇失敗してもそれを次に活かす

この3つのポイントを意識してPoCを実施すると、効率がよくなるので覚えておきましょう。

スモールスタートを意識する

PoCは大規模に行うのではなく、小さなスタートを意識するといいでしょう。なぜなら、規模が大きくなればなるほど、多額のコストがかかり本末転倒になってしまいやすいからです。PoCに必要以上のコストを割いてしまうと、開発が大きく遅れる恐れもあります。

PoCはコンパクトな環境と条件で行うといいでしょう。そうすればスピード感も出せますし、新しい製品の開発がスムーズになります。結果的に、同業他社を出し抜く新しいアイデアを形にできるのです。

チームを作り全員で目的を共有する

綿密な計画を立ててPoCを実施するのは重要ですが、あまりにこだわり過ぎると時間やコストが大きくかかってしまいます。PoCを効果的に行うためには、チームを作り目的を全体で共有するといいでしょう。

なぜならチームで目的を共有すると、物事の優先順位がはっきりするようになり、メインコンセプトをスムーズに実証できるようになるからです。

失敗してもそれを次に活かす

PoCを実施しても、必ず成功するわけではありません。大切なのは、失敗した時にそれを活かせるかどうかでしょう。失敗も経験の1つです。なぜ失敗したのか考え、それを改善するために次はどうすればいいのか考える姿勢が重要になります。

ただし、PoCを繰り返し実証し過ぎると、なかなか事業を展開できなくなってしまうかもしれません。そのような時は、なるべく具体的な改善作業を行えるように、環境を整えておくといいでしょう。

PoC実施の際の2つの注意点

PoCをより効果的に実施するポイントを見てきましたが、それを踏まえて注意すべき点もあります。

〇検証すればするほどコストが上がる

〇自社技術の情報漏えいリスクがある

具体的には、以上の2つの注意点です。この項目では、2つの注意点をそれぞれ細かく解説していきます。

検証すればするほどコストが上がる

PoCはトライ&エラーを繰り返しながら、有益な成果が出るように積み重ねていきます。ただし、検証すればするほどコストが上がる点は意識しておく必要があるでしょう。コストが上がりすぎてしまうと、それを製品化しても回収まで時間がかかってしまいます。

このような事態にならないために、目的を正しく設定し、実現に向けたプロセスを厳選する必要があるでしょう。コストと効果のバランスを見ながら取り組んでいく姿勢が、重要になるのです。

自社技術の情報漏えいリスクがある

PoCを実施する時、業務提携や協業で行うケースがあるかもしれません。これは有効な手段なのですが、情報漏えいのリスクは意識しておきましょう。自社のアイデアを守るためにも、PoC契約や秘密保持契約(NDA)などをしっかり結んでおくと効果的です。

PoC実施のパートナー選びは、プロジェクトの進行スピードをはじめ、柔軟性などにも影響を与えるので、慎重に行った方がいいでしょう。

PoCを実施して新しい技術を生み出そう

アイデアがたくさん出たとしても、本当に利益を出せるのかは判らないものです。そんな時、PoCは新しいアイデアを形にする有効な手法になるでしょう。

今回の記事では、PoCの定義や求められている理由、実施するメリットや、押さえておきたいポイント、どんな点を検証すればいいのか、検証する際の注意点などを解説してきました。

ここで紹介した内容を参考にPoCを進め、アイデアをもとにした新事業を業績につなげていきましょう。

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