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interview

<事例紹介:株式会社リクルート 次世代事業開発室 マネージャー兼knowbe事業責任者 岩田圭市様>

リクルートのSaaS新規事業「knowbe(ノウビー)」が営業代行を活用し、急成長できたワケ

2019.12.05

社会に新たな価値を創造する新規事業。
そういったチャレンジングな新規事業であれば、顧客開拓する難易度も高くなります。
しかし、人的リソースが限られている新規事業で、営業ノウハウを備えた人材を揃え、強固な営業組織を作るのは容易ではありません。顧客開拓に不可欠な営業戦略の立案から体制構築、マネジメントまで手が回らないケースも多いものです。そんな時には、営業をアウトソーシングする選択肢もあります。

リクルート社内の新規事業制度により、障害福祉に特化した運営支援ソフトknowbe(ノウビー)開発・販売事業を立ち上げた岩田さん。
新規事業立ち上げの苦労から営業代行を活用した理由を、セールスという側面から新規事業を支援するプロセルトラクションの代表である長谷川裕樹が伺いました。

1.新規事業の営業は顧客の声を正しくフィードバックすることも重要な役割

長谷川:
まずは、簡単に事業内容をご紹介いただいてもよろしいでしょうか。
岩田:
はい、Knowbe(ノウビー)は障害者福祉施設を対象に2つのサービスを展開しております。
ひとつは、運営・業務支援ソフトです。障害者福祉施設は、障害者総合支援法という業法のもと施設運営・サービス提供をする事業になります。ですので、サービス提供履歴などを記録し、業法に規定されたルールに基づいて報酬計算や請求業務を行う必要あり、その業務負荷は非常に大きいのが現状です。その業務における利用者・実績・記録等の情報を一元管理し、ワンクリックで「請求」「記録」「工賃・給与計算」に関する書類を自動作成できる仕組みを提供しております。
もうひとつは、オンライン就労支援プログラムです。将来的に企業への就労を希望されている方への就労訓練をする施設である就労移行支援施設に通所されている方に対する就労支援プログラムを開発し提供しております。
障害者福祉業界の生産性を高めて、通所者である障害者の就労支援に貢献したいと考えております。
長谷川:
ありがとうございます。当社にご依頼いただいたのは、2018年1月頃でしたね。
ご依頼いただいた時は岩田さんが営業マネージメントやディレクションを行い、実際の営業部隊は2名でしたよね。当時感じられていた課題感をお聞きしてもよろしいでしょうか。
岩田:
はい、2名の営業体制を私がマネジメントしていたのですが、当時想定した顧客課題や提供価値の初期仮説で営業活動するものの、思うほど販売できていない状況でした。しかも、その原因分析に繋がるようなフィードバックが営業からないため、売れない理由がわからず、打ち手も打てず、PDCAが回っていない状態でした。
長谷川:
新規事業のリリースタイミングでは、営業はクライアントにしっかりと商品を提案するということがまずは最優先なので、商品理解や提案書の作成・修正など、そういったことで手一杯になりがちです。かつ「良い商品で絶対売れる」というマインドセットにもなるので、立ち上げ初期はなかなかPDCAに繋がる議論が発生しにくい構造にあります。「受注に至らなかった理由」や「それを踏まえての解決策」や「新たな顧客ニーズや課題」といった事業戦略や営業戦略の転換・改善につながるようなフィードバックが、営業から無いことが課題だと強く感じました。
岩田:
おっしゃる通り、営業からいろんなフィードバックを得て、事業プランを見直すという流れがありませんでした。顧客課題や提供価値の初期仮説では売れない、でもどこに問題があるのかも抽出できないような状態でしたね。営業自身でセールスポイントを見直していけるようにPDCAを回せるのが理想だったのですが、結局は事業責任者の私が営業マネジメントに工数を割かざるをえなくて、事業戦略やプロダクト戦略作りにも悪影響が出てしまっていました。
当時は営業が個人に依存しきっていたので、組織として営業を拡大、加速させていくための土台も余裕もありませんでしたね。

2.BtoBビジネスにとって重要な営業戦略と組織の構築

長谷川:
そのような中で、当社に依頼された理由は、弊社がリクルート社の事業モデルや戦略を理解し、営業パートナーとしてはもちろん、営業からビジネスデベロップメントを支援する役割として、「ただの実行部隊」以上の組織となることを望まれたからでしたね。
営業がPDCAを回す。つまり、営業プロセスのなかでしっかりととらえた定量・定性ファクトから、戦略・戦術をリデザインするなど、事業に繋がる上流工程へ介在していける体制を構築することを、私たちに期待くださっていたと思います。
岩田:
そうなんです。初期の事業フェーズ、つまりプロブレム・ソリューション・フィットからプロダクト・マーケット・フィットの段階では、営業のPDCAをうまく回すことでお客さまの課題を抽出して商品や事業を作り、顧客セグメントごとにどのような提供価値があるかを明確にして売っていこうという戦略を立てていかないといけません。
そのために営業現場からのフィードバックやセールス戦略が、事業判断の材料となる定量・定性の情報としてアウトプットされるような組織作りが必要でした。
長谷川:
自社だけでは営業のPDCAをうまく回してシャープな戦略を立てたり、営業組織化したりするのに限界を感じて、当社へ依頼してくださったのですね。
岩田:
はい。事業戦略サポートと営業組織化の2点は、どのような新規事業のスタートアップでも本当に難しくて悩むところじゃないかと思います。
できる限り営業代行会社内で完結してもらいたいと考えていたところ、プロセルトラクションさんにはいろいろとトライしながら必要な情報を具体的に言語化、可視化していただけました。
こういうお客様にはこのような課題があるから、こういう提供価値をこうやって伝えたらいい、そういう営業戦術や戦略を明らかにしてパターン化することで、スキルの高い一部の営業だけでなく多くの営業マンが同じパフォーマンスを出して成長していけるような営業組織の形成に期待を寄せていました。
長谷川:
新規事業をセールスのチカラで加速させることを標榜している当社としては、非常に有難く、やりがいのあるご期待と役割をいただいたと思いました。
そのようなご期待や課題感を踏まえ、まず、やったこととしては、現状を正確に把握することです。具体的には、パイプラインを整理し、どこに問題があるのか、その問題の原因として、どういった理由でNGになってしまうのか。逆に受注に至る顧客はどのような顧客でどのような理由で採用いただいているのか。顧客セグメントごとにその傾向の違いを分析しました。
分析のなかで特定できたスイートスポットと課題を踏まえて、優先順位の設計と顧客セグメントごとのセールスポイントのリデザインを行いました。
その仮説をセールス活動結果から事業サイドの皆様とともにPDCAを回し、精度を高めて行く取り組みを行いました。

3.営業戦略立案だけじゃない。マネジメントまで任せられるメリットとは

長谷川:
岩田さんにとって、営業戦略設計や営業組織化をアウトソーシングするというご経験はいかがでしたか?
岩田:
事業を立ち上げた人間が、その領域に対しては誰よりも詳しく、深い思いを持っているものです。しかし、いざ売っていく段階で仲間に入ってきた営業マンの多くは、初期の頃はどうしても情報レベルにギャップがあったり、戦略が不明確だったりするので、思うように営業結果を出せずに苦労します。そういった部分で営業をアウトソーシングする不安はありました。
ただ、プロセルトラクションさんには、事業立ち上げの背景から戦略を理解し、事業のメンバーと同じレベルで取り組んでいただき非常に頼もしかったです。
また、そういったスタンスで取り組んでいただいたから戦略、戦術も表層的なテクニックでなく、的を射たものになったと思います。
長谷川:
事業を立ち上げた皆様と、ああでもないこうでもないと、一緒にトライ&エラーを繰り返すことができたので、セグメントごとに刺させる提供価値が地に足のついた、確からしいものになっていったと思います。営業活動を重ねることで営業戦略がシャープになっていきましたよね。
岩田:
「knowbe(ノウビー)」は売り方がまだ世の中に浸透していないSaaSなので、顧客のニーズを特定したり営業戦略設計を構築したりするところをお願いできてありがたかったです。
長谷川:
営業戦略の筋が見極められて営業成績も改善していきました。次に組織を拡大していくフェーズに移りましたが、そこでも営業マネジメントの難しさがありましたね。
岩田:
特に新規事業立ち上げフェーズで、営業マネジメントのノウハウを持っていない組織にとっては難しい点ですよね。現実としては、いくら具体的な営業戦略ができても、営業マンの数を増やした分だけ売り上げが上がるわけではないですから。
そういったなかで、営業マネジメント機能を担っていただけて本当に助かりました。営業マンを教育して営業の型を身に着けさせるだけではなく、目標達成するためのモチベーションを管理するところまで、営業組織の標準化をお任せできたことに大きな価値があったと思っています。
長谷川:
ありがとうございます。ご期待にお応えできたようでうれしいです。
今後も新商品のリリースや、それに伴い営業組織の拡大もあると思いますので、再現性・持続性のある営業組織作りに取り組んでいきます。

4.事業拡大のパートナーとして必要な当事者意識とスピード感

長谷川:
創業して事業を立ち上げる、つまりゼロからイチへの段階はご支援できたと思います。今後、御社は1から10へと事業を拡大させていくフェーズに来ているのではないでしょうか。
岩田:
事業責任者としては、現場を見つつも事業の成長拡大のための絵を描く段階だと思っています。フェーズが変われば、やるべきことはチェンジしていきますよね。
長谷川:
そういったモードチェンジのタイミングで、岩田さんが営業代行会社である私たちに期待されていることがあれば教えていただけますか?
岩田:
1つのモデルだけで永遠に成長し続けるのは難しいですよね。モデル1からモデル2、3へとイノベーションが必要です。
まず最初にドライブする主力事業のモデル1があり、次に中長期的に市場シェアを高めていくフェーズへと移行し、さらに新しい価値を創出する3つ目のモデルを描いていく。そうやって積み上げていく節目には、原点である事業開発のフェーズに立ち返っていくものだと思います。
その時に、事業の強みや顧客の課題の本質をきちんととらえていて、日々対峙してくれている御社のような営業がいてくれるのは、大きな強みです。
長谷川:
ありがとうございます。当社としても、事業立ち上げフェーズだけでなく、事業拡大・スケールフェーズまで伴走し、事業パートナーとしての存在を目指しているので非常に有難いお言葉です。
岩田:
新しい事業モデルを構築していくフェーズで、素早く検証したり、いい仮説を一緒に立てにいったり、テストマーケティングもスピーディーに行ってもらえたりすることを期待しています。
強固な顧客接点をしていただけているからこそ、次の事業開発に着手する段階でも力強いパートナーになっていただけるだろうと信じられるんです。
たとえば新しい商品やサービスがほしいという現場の声が出てきても、うまく汲み取って、ともに作り上げていってくださる存在として事業サイドの人間もプロセルトラクションさんを頼りにしていると思います。

5.新規事業と営業に精通したノウハウとマンパワー

長谷川:
ありがとうございます。ところで、岩田さんはどんな会社・事業に対して当社をお勧めしたいと思われますか?どんな会社や事業、チームであれば、うちのような営業代行会社を利用する値打ちがあるでしょうか。
岩田:
そうですね。創業メンバーに、営業畑でキャリアを積んできた営業体制や戦略を構築できる人材がいないケースも多いですよね。だからといって、営業畑でキャリアを積んだ人がいればいいというわけでもない。事業戦略の理解があり、それを理解したうえで、営業戦略や営業体制を構築する必ようがある会社や事業にとっては、プロセルトラクションさんが大きな力になると思います。
長谷川:
それでは、営業をアウトソーシングする会社を選ぶときに気を付けたいポイントはどのようにお考えですか?
岩田:
実はプロセルトラクションさんの前に他社に営業代行会社に委託しておりました。その時は単に営業マンの頭数を確保したいという考えに過ぎず、営業が手こずったり、売れなくて大変だったりという問題が起こるとは正直予想していなかったんです。
ただ営業マンがいればいいというわけではないんだと痛感しました。特にBtoB新規事業は、営業戦略設計や組織化ノウハウのある営業人材が不可欠ですね。
長谷川:
営業キャリアが立ち上げメンバーにいないなかで、初期の頃の営業には、かなり苦労されたのですね。他にも、何かお勧めポイントがあれば教えてほしいのですが、どうでしょうか?
岩田:
昔、大手の営業代行会社さんの話を少し聞いたことはあったのですが、プロセルトラクションさんみたいに寄り添ってくれる印象はなかったですね。基本的にできることはこれです、スーパーバイザーを置いて営業メンバーは何名で体制を組んで売っていきますみたいな話でした。
長谷川:
事業パートナーとして寄り添いながら、やっていくというスタイルではなかったのですね。
岩田:
そうですね。営業戦略サポートという感じではなかったですね。新規事業だとスタートアップの段階から計画が固まっていなくて、計画の変更や日々の変化に振り回されるケースが少なくないと思いますが、プロセルトラクションさんは変化が起きてもかなりクイックに対応してくれるところもすごくお勧めできるポイントです。特に営業デザイン力が不可欠となるSaaSの新規事業に強く勧めたいですね。
長谷川:
ありがたいお言葉をいただけて、うれしい限りです。
今後もKnowbe(ノウビー)の事業成長と目指すビジョンの実現に向けて尽力して参ります。
本日は有難うございました。